NFT界隈の主要プレイヤー 2021年まとめ

ビジネス   Posted on 2021/10/23 13:24 by syamasaki
NFT界隈の主要プレイヤー 2021年まとめ

これまでの記事では、ブロックチェーンやNFTに関するやや技術的な考察をしていました。ここでは、2021年現在のNFT界隈の主要プレイヤーを挙げ、最近のトレンドについて書きたいと思います。

NFTに関するプレイヤーは以下の分類に分けられます。

  • NFTマーケットプレイス
  • NFTアートプロジェクト
  • メタバース
  • クリプトゲーム
  • トレーディングゲーム
  • その他

主要なプレイヤーを表に整理すると以下のようになります。

NFT界隈の主要プレイヤー (2021年)
NFT界隈の主要プレイヤー (2021年)

個々のサービスについては深堀りするのは別の記事で取り上げるとして、ここでは順に簡単な説明をしたいと思います。

NFTマーケットプレイス

既に、様々なNFTのマーケットプレイスが現れており、マーケットプレイスの中でも取り扱っているNFTの種類から、1) 汎用型、2) アート系、3) 音楽系 に分類されます。

OpenSeaは、世界で最も利用されているNFTマーケットプレイスです。アート、スポーツ、ゲームなど様々なジャンルのNFTを扱っており、ユーザーが自由にNFTを発行できるため、間口の広いサービスとなっています。利用するには、metamask などのウォレットを用意する必要があります。

Coincheck NFT(β版)は、暗号資産取引所の Coincheck の中に併設された、日本で初めてのNFTマーケットプレイスです。Coincheckの口座に預けている暗号資産をそのままNFT決済に利用でき、上場している14種類の暗号資産で決済ができます。また、中央集権型のマーケットプレイスであるため、ガス代がかからないのも特徴です。ゲーム、スポーツ、メタバースなど様々なジャンルのNFTが取り扱われています。

Binance NFTは、大手暗号資産取引所 Binance が、2021年にリリースしたNFTマーケットプレイスです。Binance で購入した暗号資産(ETH, BNB, BUSD)をNFTの決済に利用することができます。現時点では、Binance がパートナーとして提携しているクリエイターのみがNFTを販売できるようになっています。

VIV3は、Flow というブロックチェーンを基盤としたNFTマーケットプレイスです。Flowは、CryptoKitties で有名な カナダのゲームアプリ会社 Dapper Labs が、イーサリアムの課題を解決するために自前で開発したブロックチェーンです。高額取引として話題になった NBA Top Shot でも採用されているブロックチェーンで界隈ではとても注目されています。VIV3では、暗号資産の Flow を NFT決済として利用することも可能です。Flow を利用することで、NFTの発行やトランザクションの発生に、イーサリアムのガス代がかからないのは大きな特徴と言えるでしょう。現在は、アート系NFTの取り扱いがメインです。

Atomic Marketは、WAX というブロックチェーンを基盤としたNFTマーケットプレイスです。Atomic Market は、Atomic Hub や、NFTHive など複数のマーケットプレイスから構成されており、暗号資産のWAXを決済として利用することができます。利用するには、WAX Cloud Wallet の準備が必要となります。

miimeは、世界ではじめて日本円決済を導入したNFTマーケットプレイスです。ブロックチェーンゲーム関連のNFTの他に、アートやスポーツ系のNFTも取り扱っています。利用するには、metamask など対応するウォレットを用意する必要があります。

NFT Studioは、ブロックチェーンゲームの主要プレイヤーであるCryptoGamesが、イラスト作品をNFTアートとしてブロックチェーン上に発行できる「NFT Studio」を2021月3月22日にリリースしました。ブロックチェーンの特性を利用し、二次流通売買が行われた際、売買手数料の一部がクリエイターに永続的に還元されます。ブロックチェーンチェーンはpolygon(Matic Network)を採用を採用し、高騰するトランザクション手数料(ガス代)に対策をしています。

Raribleは、アート系NFTを中心に取り扱っているNFTマーケットプレイスです。各アカウントがNFTを発行することができ、自身のデジタルアートを出品することが可能です。また、RARIという暗号資産を発行しており、インセンティブとしてユーザーにはオフするなど、暗号資産とNFTを絡めた独自の取り組みを実施しています。利用するには metamask 等の対応ウォレットが必要となります。

SuperRareは、アート系NFTを中心に取り扱っているNFTマーケットプレイスです。プラットフォームの特徴は、クリエイターが作品の価値を高めることで、2次販売時に10%の手数料を得ることができることです。

Foundationは、アート系NFTを中心に取り扱っているNFTマーケットプレイスです。Foundationの特徴は、NFTのクリエイター登録に事前審査制を導入していることです。そのため、取り扱われるNFTアートのレベルは一定の基準を担保されています。利用するには metamask などの対応ウォレットが必要になります。

nanakusaは、今年(2021年)にリリースした、国内初のクリプトアーティスト登録制のNFTマーケットプレイスです。クリエイターは、審査の通ったアーティストやパートナー事業者のみに限定しており、質の高いNFTアートを購入することができます。決済には、イーサリアムだけではなく、Polygon やクレジットカードにも対応しています。Polygon ネットワークに切り替えることで、イーサリアムで課題とされていたガス代を大きく節約することができます。利用するには、metamaskの準備が必要となります。

The NFT Recordsは、音楽系NFTを取り扱っているNFTマーケットプレイスです。2021年5月22日に活動を休止した韓国の6人組ガールズグループ GFRIEND の公式NFT「ありがとう!GFRIEND NFT」が、The NFT Records から販売されました。他にも ヘビーメタルバンド LOUNDNESS や、ラッパーの SEAMO などが The NFT Records にてNFTを販売しています。

royalは、楽曲の所有権をNFTとして販売し、ファンがロイヤリティを受け取れるようにする音楽マーケットプレイスです。コアコンセプトは、音楽とNFTを結びつけて、ユーザーがマーケットプレイスで曲の「所有権」を買えるようにし、人気が出るとロイヤルティを得ることができる、というものです。Royalには、「3LAU(ブラウ)」という名前で活躍するEDMアーティストのJustin Blau(ジャスティン・ブラウ)氏が関わっていることが話題となりました。Royalのローンチの詳細やプロダクトの計画はまだ情報が少ないですが、今後の動向が期待されます。

NFT Experimentは、音楽系NFTを取り扱っているNFTマーケットプレイスです。コンセンサスアルゴリズムにPoSを使い、トランザクションスピードが改善され、環境負荷も小さくしている、Polygon をブロックチェーンとして採用しています。Netflix で配信中の、Perfume Imaginary Museum “Time Warp” で使用したデータを基に作成される、Perfume 初のNFTアート作品 Imaginary Museum “Time Warp”が、2021年6月11日より販売されました。オークション販売の結果、2万MATIC、日本円に換算すると約325万円で落札されました。

NFTアートプロジェクト

NFTマーケットプレイス上では、高額の取引が行われている有名なプロジェクトがいくつかあります。

CryptoPunksは、Larva Labs 社にて、2017年6月から始まったNFTプロジェクトです。このプロジェクトは、世界初のNFTアートと言われており、非常にシンプルな 24 x 24 ピクセルアートでゾンビを基調としながら AI によって生成された1万体のジェネレイティブアートであることが特徴です。このCryptoPunks の一つのキャラクターが 2021年1月、約8000万円で取引されたことが世界中で話題となりました。そして、同年8月中旬には、大手決済事業者である VISA が 本NFTを購入したことで大きなニュースとなりました。

スイスに本社を置く Suum Cuique Labs 社がプロデュースしたプロジェクト Hashmasks も有名です。70名以上のクリエイターが8ヶ月もの期間を要して準備した 1万6384体のマスクに個性を与えたアートですが、2021年1月28日の販売と同時に即完売したことで一躍有名なプロジェクトとなりました。Hashmasks は、5つの特徴的なパーツを組み合わせ、一つのキャラクターアートとして描かれています。最大の特徴は、Hashmasks 保有者には毎日10 NCT トークンが配布されることで、NCTトークンを一定数持つと Hashmasks の名前を変更することができます。最も人気のある Hashmasks のキャラクターは、2021年1月当時、約6900万円の価値で取引されたことで話題となりました。

Bored Ape Yacht Clubは、2021年4月30日に発足したNFTクラブです。1万体の猿のアバターが発行され、初期はイーサリアム換算で200ドルの価格で販売されました。現在では最低価格が 15ETH (日本円で約500万円) と驚異の高騰を見せています。BAYCにはいくつかの特徴があります。1つ目は、発行したNFTのみが入れる会員サイトが存在すること。2つ目は、所有しているアートの商権は所有者が保有すること。3つ目は、販売前にロードマップを提示すること。そして、その結果、同一の種族のアバターを所有することでの組織としての帰属意識が生まれ、共通のゴールを提示することで組織が統一されました。また、商権を所有者に渡すことで従来の中央集権的なIPの組み立て方ではなく、コミュニティ主導のIPの盛り上げ方となりました。

メタバース

メタバースとは、SF作家ニース・スティーヴンスンによる造語が由来で、「インターネット上に構築された仮想の三次元空間でアバターなどを用いて接する環境」です。メタバースのサービス自体は、2003年に Linden Labから発表された Second LifeやFortnite、Roblox、VRChat、Cluster、Facebook Horizonなどが既にありますが、このメタバースにNFTを持ち込むことで可能性が大きく広がりました。

Conataは、NFTネイティブなメタバースを提供しています。Crypto Art Fesは、日本最大のメタバース上でのアート展示会として、2021年4月にConataで開催されました。インターネット上で90名以上のアーティストが集まり、300点以上の作品が一挙に展示されたイベントです。

The Sandboxは、NFTゲームの代表とも言える存在で、NFTをベースにした仮想ゲームワールドであり、分散型でオープンな世界です。The Sandboxは、ユーザー主導のプラットフォームであり、ユーザーは自分のアイデンティティ、ゲーム資産、ゲーム内通貨である SAND を管理し、アセットを真に所有することができます。

Decentralandは、イーサリアムブロックチェーン上に構築された VR (仮想現実)空間のプラットフォームです。ユーザーはDecentraland内で構築される施設などの利用者として楽めるうえ、仮想空間内で展開されるゲームなどをプレイ可能です。Decentralandでは保有している土地を売却したり、他のユーザーがこの空間に参加して、デジタル通貨の売買ができるという独創的な開発ツールを提供しています。Decentraland 内のエコノミーは、独自トークンのMANA(ERC20トークン)をベースに構築されています。

CryptoVoxelsは、ニュージーランドのNolan Consulting LimitedのオーナーBen Nolan氏が中心になって開発を進めるEthereumブロックチェーンを利用した3D仮想世界です。Decentralandがスムーズな3D世界であるのに対し、Cryptovoxelsはその名の通り、立方体(ボクセル: 3次元空間で体積の最小単位を表す立方体)を積み上げて作る、いわばレゴブロックのような世界です。

ここで取り上げたメタバースでは、NFTによるオープンなマーケットが存在します。土地や不動産、音楽、アート、ゲーム、ファッションなどはもちろん、VRミュージックフェスなどのイベントチケット、そしてメタバース用のアバターやメタバース空間そのものがNFTとして取引がされています。

クリプトゲーム

NFTゲームは、アナログのトレーディングカードゲームに例えられることが多いです。NFTゲームはデジタルでも、「世界に○枚しかない」という有限なことが証明されるため、希少なカードは資産価値を持ちます。また、アナログのトレカをカードショップや友達同士で交換するように、デジタルでも自由にトレードや売買を行うことが可能です。

Axie Infinityは、2018年にリリースされたベトナム発のNFTゲームです。ポケモンのように保有するモンスター「Axie」を戦わせるゲームです。ブロックチェーンゲームならではの特徴として、ゲームプレイで得られる様々なゲーム内アセットを通じて、直接的な収益をプレイヤーが得られる点があります。元々はイーサリアムブロックチェーン上のゲームでしたが、イーサリアムがスケーラビリティ問題(ユーザー過多による処理遅延や)やガス代の問題を抱えていたことから、現在は独自に開発したイーサリアムのサイドチェーン「Ronin」で稼働しています。Ronin導入前より、フィリピンなどの一部の国では、Axie Infinityによる収益を副収入減とする一部ユーザーが見られました。

My Crypto Heroesは、DoubleJump.tokyo が提供するNFTゲームのRPGです。イーサリアムベースのブロックチェーンゲームとして、取引高・取引量・DAUで世界1位を記録し、リリース後2年の累計売上は 2万ETHを越えています。ドット絵で描かれた歴史上の英雄キャラクターでパーティを組み、ノードと呼ばれるダンジョンに挑んで敵を倒し、手に入れたレアアイテムでさらにパーティーを強くしていくゲームです。英雄キャラクターと装備アイテムがそれぞれNFTになっており、ユーザー間で取引ができます。

CryptoSpellsは、CryptoGames株式会社が提供するトレーディングカードゲームを題材としたNFTゲームです。2018年6月に正式リリースされ、売上金額は初日で600ETHを突破し、当時日本最高記録となりました。CryptoSpellsは、30枚のカードと、最初の手札として一つ選べる特殊なカード「クリプトスペル」3枚でひとつのデッキを組み上げ、そのデッキでNPCやプレイヤーと戦うターン制のカードバトルです。

トレーディングゲーム

従来は主に紙ベースで販売・流通が行われてきたトレーディングカードの世界にも、NFT化の波が押し寄せてきています。リアルトレーディングカードを手掛けていたイタリアの Panini S.p.A社、アメリカの The Topps Company社なども、2019年頃よりNFTの可能性に注目し参入を発表。現在ではNBA、MLB、NFLのスポーツカードなどをNFTにより販売しています。

2021 Topps Series 1 Baseball NFTは、リアルトレーディングカード取り扱いの老舗である The Topps Company が運営するNFTトレーディングカードサービスです。Topps Companyは、2020年5月にNFTに特化したブロックチェーンネットワークWAXを使い、Garbage Pail Kids というオリジナルキャラクターでNFTトレーディングカードを発売、NFT事業に参入。そして、2021年4月にアメリカ大リーグMLBをテーマにした 2021 Topps Series 1 Baseball NFTを発売しました。

NFTトレーディングカードにおいて最大の成功をあげた NBA Top Shotは、カナダの Dapper Labsにより 2020年10月にサービスがスタートしました。アメリカのプロバスケットボールリーグ NBA をテーマにNFTトレーディングカードを発売しました。NBA Top Shot は、発売から半年余りの間に7億ドルもの売上をあげ、多くのユーザーを取り込みました。ちなみに、NBA Top Shotは、Dapper Labsの独自開発のFlowブロックチェーン上で実装されています。

Sorareは、現実のサッカーの試合の戦績がゲームのスコアに反映されるブロックチェーンゲームです。現実世界で実際に活躍している選手のデジタルプレイヤーカードを使用して、仮想チームについて購入、販売、取引、管理するゲームです。2018年の設立から続々とライセンス契約を増やしており、世界の主要リーグはもちろん、コアなフットボールファンが喜ぶような中小規模クラスのチームとも積極的に提携を発表しています。ランキングに応じて、イーサリアムなどの暗号資産はもちろん、レアカードなどを入手でき、ブロックチェーンで管理されているため、各NFTが持つ資産価値が可視化されていることも特筆すべき点と言えるでしょう。

その他

Socios.comは、Chilizが運営する、ブロックチェーン技術を活用した、プロスポーツチームがファントークンの発行と販売ができるプラットフォームです。ファントークンを発行することでスポーツチームは資金調達ができ、ファンはファントークンを購入することでチームが行う投票企画に参加できる権利や、グッズなどを入手できる権利などを取得できる仕組みとなっています。この仕組みにより、チームとファンに新たなエンゲージメントを生み出すことが期待されています。

FiNANCiEは、ブロックチェーンを活用した新世代クラウドファンディング2.0のプラットフォームを提供しています。フィナンシェでは、クリエイターは、自分のやりたいことを実現する資金を集めるために自分のトークン(NFTやポイント)を発行します。それを買うのはクリエイターのファンです。基本的には自分たちが出した資金で出来たクリエイターの作品がリターンとなります。この仕組みで、従来の株式会社の仕組みを新しい時代にあったものにアップデートしようとしています。売上や利益など企業の時代の価値の尺度は、個の時代には合わないということです。

まとめ

以上、今のNFT界隈の主要なプレイヤーをざっと見てみました。NFT界隈の全体感がつかめたのではないでしょうか。

本記事では全体感を掴むことを目的に、各サービスについては簡単な説明に留めました。より深ぼった内容については、別に記事を書いていきたいと思います。

編集者

syamasaki

あるベンチャー企業(現マザーズ上場)のCTOを務め、その後数々のスタートアップ企業のCTOやリードエンジニアを担当。最近は、ブロックチェーンに興味を持ち、トークンエコノミープロジェクトにも参画。東京工業大学大学院、情報理工学研究科卒。NFTを中心にビジネスだけでなく技術的な面も深堀りながら解説します。

Twitter: @0xsyamasaki
(運用し始めたばかり)